第二葉
龍の涙

サムダルリへようこそ
EP01 (03:32〜06:35)
STEP 4:連・バディと野生

音声準備中

ある島に、二人の子どもがいます。

少女は空を見上げ、少年は足元の水面を見つめている。同じ夕暮れの中で、二人の目に映るものは、まるで違っていました。

「小川で生まれた龍になります」

少女はそう宣言しました。幼い声に、迷いはありませんでした。

島の子どもたちは皆、いつか島を出ます。進学のため、就職のため、あるいは、ただ「ここではないどこか」を求めて。けれどこの少女の目には、もっと切実な光がありました。小川を出て、空を飛ぶ龍になること。それだけが、自分の人生を自分のものにする方法だと信じていたのです。

少年は黙って聞いていました。そして静かに、こう返します。
「ずっと小川に住んだらダメかな」

少女には少女の空があり、少年には少年の水がありました。

少女は島を出ました。

都会の空は、思っていたよりも低かった。龍になるために差し出したものの重さを、街の誰も知りません。

苦労が人を龍にする、と誰かが言います。けれど龍になった人の鱗の下に、いくつもの擦り傷があることを、誰が見ているでしょうか。

名刺の肩書き。終電の窓に映る顔。「あなたは立派になったね」と言われるたびに、立派になる前の自分が、少しずつ遠くなる。

小川に戻りたくなかった。

戻れなかったのではなく、戻りたくなかった。龍として飛び立った自分が、小川に戻れば、ただの魚に戻ってしまう気がした。あれほどの痛みを引き換えに手にしたものが、潮風に溶けて消えてしまう気がした。

けれど——小川は関係なく流れています。少年が守りたかったあの水は、彼女が飛び立った後も、同じ速さで海に注いでいました。龍が何者になっても、ならなくても、小川はただ、そこにありました。

帰ることは、後退ではありません。帰る場所があるということは、かつて誰かが、あなたの小川であろうとしたということです。

龍の涙は、空では乾いてしまいます。
けれど小川に落ちれば、水になる。

The Seed of Inquiry

あなたが龍になろうとしたとき、
小川であろうとしてくれた人の顔を、
覚えていますか。